IE9ピン留め

a piece

東京



東京にちょっぴり恋している。その気になれば、東京ほど
学べる場所はない。導かれながら、あらゆるジャンルの深
き人々に出会える。混沌とした雑踏に埋没しそうになり、
だからこそ己を見つめることができる。それらを通してプ
ロセスという世界が見える。
























# by masahiro-masuno | 2012-01-29 16:25 | Tokyo Tree | Comments(0)

俯瞰



近所の墓地のてっぺんから見渡す風景が気に入っている。里山の
麓にたくさんの墓が並び、竹林を境界にして向こうに町が広がる。
そのまた向こうは海と空。生も死も、自然も人工物も、みんなこ
の手中にある。まるで観音様の視座から眺めているような気分は
単純に気持ちがいい。俯瞰するまなざしを時には思い出したいも
のだ。でも全体を眺めているだけじゃやっぱり物足りない。町に
埋もれて蠢いて、家の外や内で泣いて笑ってこそ生きている。人
間なんだもん。






















# by masahiro-masuno | 2012-01-22 18:36 | あいつ | Comments(0)



前触れもなく音もなく、雪が降り出した。空を見上げる。灰色
の柔らかなシルエットになって、雪が舞う。とても不思議な光
景だ。雪が降るなんて。ひらひら、はらはら。手のひらを差し
出す。ひとひらが舞い降りた。ほんの少しの冷たさに心がふん
わりあったまる。雪は天からの手紙だと、ふるさとの科学者が
言った。しんみりと手の中で消えてった。



























# by masahiro-masuno | 2012-01-20 12:34 | あいつ | Comments(0)

二十六夜



細りゆく明け方の月を見上げながら、年の瀬を感じてみる。婿を
喪った一年が、二年になり、こうして日々がゆっくりと過ぎてゆ
く。否、過ぎ去るのではない。めぐっているのだ、この月のよう
に。欠けて、消えて、また現れて。なにもかも、きっと。めぐり
来る新しい年はどんなふうに迎えようか。元旦は京都で仕事。世
の中の暦に合わせてありがたく従事する。帰ったら、老いた両親
を初詣に連れて行く約束をした。旧正月のしらやまさんはすでに
平常業務だが、だから周りを気にせず心安らかに手を合わすこと
ができる。そうだ、友からの韓国土産の濁酒があった。お屠蘇と
していただこう。新年を滞りなく迎えることができたなら。




























# by masahiro-masuno | 2012-01-19 22:28 | あいつ | Comments(0)

電話ボックス






今では珍しいもののひとつになってしまった電話ボックスには、
いくつもの思い出がある。東京に出て数ヶ月経ったころ、下宿
近くの電話からふるさとへかけた。貯めた十円玉がコトンコト
ンと音を立て驚く早さで落ちて行った。半分ほどは言葉が見つ
からず黙り込んでいたかも知れない。プツンと途切れたあと、
受話器の向こうにいた人を想い、胸の高鳴りがすぐには治まら
なかった。あの夜が遠距離恋愛のはじまりだった。電話ボック
スの閉ざされた空間は外からでも見えるけれど、入ってしまう
と空気が変わる。電話線でつながった、私的な物語がはじまる
のだ。電話一本するだけのことなのに、ここを離れたどこかで
物語りをはじめる覚悟のような新しい気持ちが必要になる。ひ
とつひとつゆっくりとボタンを押した。ケイタイなんかじゃ決
して感じ得ない、今から思えばとても味のある瞬間だった。小
さな箱の中でいつも体丸ごとで電話していた気がする。
























# by masahiro-masuno | 2012-01-17 11:36 | あいつ | Comments(0)

少年とかまくら



今年もジッジとかまくらを作るんだと、タウが楽しみに
していたんだとか。それを聞かされたのでは作らないわ
けには行かない。せっせと雪を積み上げ、中を掘り出し
た。北陸の雪は湿って重い。かまくら作りは遊びという
より体力的には労働に近い。なんとか夕暮れに間に合っ
た。ろうそくを何本も灯す。ジッジはそればかりが楽し
みだったんだ。この少年、ジッジの昔によく似ている。
とても遊び上手だ。























# by masahiro-masuno | 2012-01-14 18:53 | 日々のカケラ | Comments(0)

秘密の原っぱ



行きつけの秘密の原っぱがある。ほとんど誰も来ないものだから
そう呼んでいる。こんもり小高い里山と竹林に囲まれて、ひとり
でいるとちょっとした舞台にもなる。歌い踊りオカリナを吹き、
時には寝そべって空が友だち。天上の人へと思いを馳せる私的な
聖地でもある。人間にはきっと秘密の場所が必要なんだろう。そ
の場所でしか感じられない、自分の中の変わらないものと変わっ
てゆくものがある。変わらないはずの風景がちがって見えてくる
というプライベートな経験がそれを教えてくれる。


























# by masahiro-masuno | 2012-01-09 07:26 | あいつ | Comments(0)



日本人は兎小屋に住んでいると、どこのどなかたは忘れたが、外国のお方が
かつて申された。その方々のお国の歴史を越えた年月をこの部屋は持ってい
る。古き良きものを来る日も来る日も手入れして、大和の国は続いてきたん
だろう、などと兎小屋に住みながら想像してみる。時は金なりとはいつのこ
ろから言い出したものか。時は、珠玉の宝物ではあるけれど。























# by masahiro-masuno | 2012-01-05 12:47 | 日々のカケラ | Comments(0)

街灯



舞い降りたばかりの雪の上に街灯の光が広がっていた。なんと
豊かな諧調だろう。晴れとも曇りとも無縁な、まだ闇に包まれ
ている夜明け前、雪が、灯りが、こんなにも美しい。踏み込む
ことさえできない、公園の畏憚の時。





















# by masahiro-masuno | 2012-01-04 11:07 | あいつ | Comments(0)

illusion



東京には魔法使いが棲んでいる。関心があるような、ないような、どちら
とも見分けのつかない顔をして通りを彷徨っている。誰がそうで、そうで
ないのか、魔法にかかると見えてくる。やめろ、やめるんだ、自分に魔法
をかけるなんて。こんな夜は、段ボールの壁に埋もれて眠れ。




















# by masahiro-masuno | 2011-12-30 10:53 | Tokyo Tree | Comments(0)

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